Amagの運営会社では、システム開発事業とIT研修事業を主な事業としています。
今回、研修事業向けに生成AIを利用したRAGアプリケーションをリリースしましたのでご紹介します。
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RAGアプリケーションとは
RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、「検索拡張生成」と訳される技術で、AIの回答生成能力と外部知識の検索・参照機能を組み合わせたアプローチです。
簡単に言うと、AIが質問に答える前に関連する外部の情報を検索して、それを基に回答する仕組みです。
チャットボットが専門的な情報を回答できるようにしたものだと考えるとイメージがしやすいかもしれません。
RAGの簡単な概要は以下の通りです。
基本的な仕組み
- 検索(Retrieval): ユーザーの質問に関連する情報をデータベースやドキュメントから検索します
- 拡張(Augmented): 検索で得た情報をAIの入力に追加します
- 生成(Generation): AIが検索結果を参考にしながら、最適な回答を生成します
RAGが解決する課題
- 知識の最新性: AIモデル自体の知識は訓練時点で固定されますが、RAGは最新の情報を検索して参照できます
- 専門知識の補完: AIモデル自体では回答が難しい特定分野の専門的な情報を、データベースやドキュメントから取得できます
- 根拠の明示: 回答の根拠となる情報源を明確に示せます(データベースやドキュメントからの引用元を示すことができます)
- 誤情報の低減: データベースやドキュメント等の実際の情報に基づいて回答するため、誤情報が減ります
研修事業にWayFinder AIを導入
現在Amag運営会社では外部研修事業と自社の新入社員向けの研修において、Javaを中心としたIT研修を行っています。
その研修をより効率的に進める事を目標とし、RAGを利用した生成AIチャットボットアプリケーションをリリースしました。

生成AI基盤モデルはClaude 3.7 Sonnetの標準思考モードを利用しています。
同モデルに備わっている拡張思考モードはコーディング等の能力が大幅に改善されており、今後の研修カリキュラムの見直しと共に利用検討を行っていきます。
WayFinder AIが参照する外部知識は
これまで研修事業で講師が直接教育・回答するしか出来なかった内容が多々ありました。
しかしその内容はナレッジとして自社にドキュメントベースで保存してあります。
今回はそのドキュメントをWayFinder AIに参照してもらう形でアプリケーションを構築しました。
- javaの基礎
- ネットワーク基礎
- DB、SQL
- HTML、CSS、Javascript
- Spring
これらの内容について、AIがより正確で分かりやすい形で回答してくれます。

研修受講者のメリットは
様々な利点がありますが、以下の内容をより加速させることに期待ができます。
自己解決能力の向上
- プログラミングの疑問点を自分でRAGシステムに質問して解決できます
- エラーメッセージの意味やデバッグ方法を即座に学べます
- 24時間いつでも「AI講師」に質問できるため、学習のブロッカーが減ります
効率的な学習プロセス
- 質問に対して即時にフィードバックが得られるため、学習サイクルが短縮されます
- 自分のペースで進められるため、個人の習熟度に合わせた学習が可能になります
- 反復練習が簡単にできるため、難しい概念も確実に定着させられます
クリティカルシンキングの強化
- AIが提供する情報を鵜呑みにせず、検証・評価する習慣が身につきます
- 複数の情報源や視点から答えを導き出す思考法を習得できます
- 問題の本質を見極め、最適な解決策を考える力が培われます
今後の展開
マルチモーダル対応(画像認識機能を追加することで、コード画像からの質問応答などが可能になる)や、リアルタイムコードレビューなど、更にコーディング能力を高める機能を充実させていきたいと考えております。
また現在は研修にご参加頂いた方のみの提供ですが、より多くの方々にご利用頂ける取り組みも行っていきます。
まとめ
今回開発したJava研修用RAGアプリケーションは、エンジニア教育の新たな手法と感じています。
従来の座学と実習を組み合わせた研修では得られなかった、「実践的な問題解決」と「自律的な学習サイクル」の手助けとなります。
生成AIを活用したこのシステムにより、研修生は質問への回答を待つだけでなく、AIとの対話を通じて思考プロセスそのものを学ぶことができます。
これは、知識の暗記から「学び方を学ぶ」という本質的な教育へのシフトを意味します。
またRAGシステムの導入により、研修プロセス自体がデータ駆動型に変わりました。
研修生の質問パターン、つまずきやすいポイント、学習の進捗速度など、これまで見えなかった学習プロセスの詳細をデータとして蓄積し、システムへ反映する事ができます。
これにより、個々の研修生に合わせたパーソナライズド学習や、カリキュラムの継続的改善が可能になります。
このようなシステムの基盤が構築できたことにより、教える側も継続的な改善の機会を得ることができます。
このサービスをきっかけに更に次世代エンジニアの育成に貢献していきたいと考えております。